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「家は売るべき?住み続けるべき?」「住宅ローンが残っているけど、どうすればいいの?」「相手が勝手に家を売却したらどうしよう…」
離婚を考えるとき、家の問題は最も大きな悩みの一つではないでしょうか。特に共有財産である不動産をどう扱うかは、将来の生活基盤に直結する重要な問題です。このような不安を抱えている方は決して少なくありません。
本記事では、福島市における離婚時の不動産売却と財産分与について、具体的な手順やパターン、税金面の知識、そして心理的な負担を軽減するためのアドバイスまで、専門家の視点からわかりやすく解説します。適切な判断をするための情報を得て、新しい人生のスタートを円滑に切れるようサポートします。
福島市の不動産市場は、昨年ごろから全体的に下落傾向にあります。特に、蓬莱町・しのぶ台・南向台などの古い大型団地の価格の下落幅が大き目立ちます。一方、福島駅周辺や、商業施設の充実した南矢野目エリア、南福島エリアなどでは価格が一部上昇しているエリアもあります。
今後日本全体でインフレが進む中、相続空き家が加速度的に増えていきますので、人気エリアでは価格が多少上昇する中、人気のないエリアのますます価格が下落し、価格の2極化が進むでしょう。
離婚に際して不動産を売却する場合、基本的な手順を押さえておくことが大切です。以下が一般的な売却プロセスです。
不動産の登記簿謄本や売買契約書で所有者(名義人)を確認します。名義人でないと売却手続きはできません。夫婦の共有名義や親名義になっている場合もあるため、確実に確認しましょう。名義変更が必要なときは司法書士など専門家への相談が早期解決の鍵です。
現在の住宅ローン残高と名義人、連帯保証人を金融機関に確認します。残債と想定売却価格を比較し、アンダーローン(売却額が残債を上回る)かオーバーローン(残債が売却額を上回る)か判断します。
売却額でローン完済できるアンダーローンなら通常通り売却可能ですが、オーバーローンの場合は不足分を自己資金で補わない限り抵当権抹消ができず売却できません。この段階で今後の方針(売却するか住み続けるか)を検討します。
複数の不動産会社に査定を依頼し、市場価格を把握します。査定額が高いからといって安易に飛びつかず、実績や信頼性で仲介会社を選ぶことが重要です。福島市内の相場や地域特性に詳しい地元の不動産会社に相談すると良いでしょう。
査定をもとに売出価格を決め、不動産会社と媒介契約を結んで販売活動を開始します。内覧対応や価格交渉などは仲介業者がサポートしてくれます。夫婦で事前に最低希望価格やスケジュールをすり合わせ、情報共有しておきましょう。
買主が見つかったら売買契約を結びます。契約時に手付金を受領し、物件の引き渡し日や分配方法を確認します。離婚に伴う売却の場合、売却代金の分配方法について夫婦間できちんと合意し、公正証書に残すことを強くおすすめします。
公正証書は法的に強い証拠となり、後日のトラブル防止に有効です。
決済日に残代金を受け取り、同時にローン完済・抵当権抹消手続きを行います。その後、買主へ物件の引き渡しと所有権移転登記を完了させます。売却益は公正証書の取り決め通りに夫婦で分配し、必要に応じて税務手続きを行います。
離婚時の不動産処理には主に次のようなパターンがあります。それぞれメリット・デメリットが異なるため、夫婦の状況に合った方法を選びましょう。
最もシンプルで公平な方法です。売却代金からローンを完済し、残った現金を夫婦で分けます。例えばアンダーローンで1,000万円の売却益が残れば、原則500万円ずつ分配します(話し合いで割合変更も可能)。
家を第三者に手放すことになる点はデメリットですが、きれいに清算できるため後腐れが少ない方法です。
夫婦のどちらかが家を取得し、取得者が相手に対して持分相当の代償金を支払う方法です。例えば妻が家に残る場合、妻が夫に対し夫の持分価値分の現金を渡します。
注意点として、住宅ローンの名義変更が必要になるケースがあります。ローン名義人でない妻が住み続ける場合、安定収入があれば銀行の承認を得てローン契約を妻に切り替えることも可能ですが容易ではありません。
切替えが難しければ、夫がローン名義人のまま妻が返済する形(名義人と居住者の分離)となります。この場合、銀行から一括返済を求められるリスクもあるため事前に金融機関と相談しましょう。
離婚時にローン残債がある家は、上記ケース①②の選択肢に加え、ローン残に応じた対応が必要です。オーバーローンの場合、家を売ってもローン完済できないため基本的に売却できません。
この場合は、預貯金などで差額を埋めて完済し売却するか、離婚後も名義人がローンを払い続けるしかありません。どうしても売却したいときは、金融機関と協議のうえで任意売却を検討する方法もあります。
一方アンダーローンであれば売却して完済・分配が可能なので、ケース①の手順で進められます。なお、連帯保証人やペアローンの場合は離婚による債務者変更が難しいため、専門家に相談しながら進めましょう。
離婚に伴う不動産処分では、税金面の知識も欠かせません。適切に手続きを行い、利用できる控除は漏れなく活用しましょう。
マイホームを売却して利益(譲渡所得)が出た場合、原則として譲渡所得税がかかります。ただし居住用財産の3,000万円特別控除という優遇制度があり、自宅を売った際の譲渡益から最大3,000万円を非課税控除できます。
この控除を受けるにはいくつか条件がありますが、離婚に伴う売却でも適用可能ですが、個別事情により適用不可となる場合もあるため、事前に税務署や税理士に確認する必要があります。
ポイントは、財産分与の合意があり、他の適用要件を満たすこと。離婚前でも条件を満たせば特別控除の適用が可能です。
配偶者への譲渡でも、財産分与として行われ、他の要件を満たせば特別控除の適用が可能です。離婚協議書に『○ヶ月以内に住宅を売却し、その代金を分配する』など時期を定めておくと、手続きが円滑に進むでしょう。
また、この特別控除を受けるには他の特例を使っていないこと、確定申告をすることも要件です。
離婚による財産分与として不動産を分ける場合、基本的に贈与税は課税されません(婚姻中に共同で築いた財産の清算とみなされ非課税)が、注意点もあります。
分与された財産額があまりに過剰である場合や、離婚自体が節税目的と認められる場合には贈与税が課される可能性があります。特に負担付贈与(ふたんつきぞうよ)という形態に要注意です。
これは「財産を贈与する代わりに債務を負担させる」もので、例えば「夫が妻に住宅を贈与し、妻がその住宅ローン残債を引き受ける」ケースが該当します。負担付贈与は名目通り贈与として扱われるため、先述の住宅ローン控除も適用できなくなるデメリットがあります。
財産分与による所有権移転は非課税ですが、負担付贈与とみなされないよう、贈与ではなく離婚協議に基づく分与として手続きを進めることが重要です。
住宅ローン残高の1%を所得税から控除できる住宅ローン控除は、離婚によって適用可否が変わります。家に住み続けるローン名義人であれば、引き続き控除を受けられます。
一方、ローン名義人でない方が住み続ける場合や、家を出ていく側は控除を受けられません。また、離婚に際して住宅ローンや持分を引き継ぐ場合、新たに取得した持分について控除を受け直せるケースもあります(借り換え扱いになるなど条件による)。
基本的には自分がローン名義人かつ、その家に居住していることが控除継続の条件です。離婚後に名義人が変わったり贈与による取得となった部分については控除対象外になるため、住宅ローン控除の最終年度まで残りわずかなら売却を少し延ばして控除を満額受け切る、といった検討も良いでしょう。
以上のように、税金面では専門的な判断が必要です。譲渡所得が発生した場合は確定申告も忘れずに行いましょう。不明な点は税理士や税務署に相談し、最適な節税策を確認することをおすすめします。
離婚に伴う不動産処分では、金銭や手続きに関するトラブルが起こりがちです。円滑に進めるためのポイントを押さえておきましょう。
財産分与の内容については必ず夫婦双方で合意し、書面に残します。口頭の約束だけでは後から「聞いていない」という争いになりかねません。公正証書や離婚協議書を作成し、売却代金の分け方や支払期限を明記しておけば安心です。
公証役場での公正証書作成には費用がかかりますが、将来の紛争予防と割り切って活用しましょう。
共有名義でなく一方の単独名義になっている不動産は、離婚後にその名義人が相手に無断で売却してしまうリスクがあります。例えば夫名義の家に妻と子が住み続けていても、夫は妻に知らせず家を売ることが理論上可能です。
これを防ぐには、離婚時にあらかじめ不動産の持分を分けておく(共有名義に変更する等)方法があります。他にも権利証(登記識別情報)の預かりや「勝手に売却しない」といった念書を交わす、物件が売りに出されていないか定期的にチェックする、といった対策も有効です。
最終手段として、裁判所に仮差押えを申し立てて登記に禁止の仮処分を付ける方法もあります。
不動産を処分しない場合、離婚後もローン返済義務は名義人に残ります。離婚を機に連帯保証人を外れることも基本できません。
後々「払う払わない」の争いにならぬよう、離婚協議書にローン返済の取り決めを明記しておきましょう(例:「夫が完済まで責任をもって支払う」等)。また、連帯債務型のペアローンの場合は離婚後の負担割合を明確に合意し、書面化しておくことが大切です。
財産分与の請求権は、原則として離婚から2年以内に行使しなければ時効により消滅します。ただし、調停や裁判によって時効が中断される場合もあるため、早めに専門家に相談することが大切です。
離婚時に不動産の処理が決まらずとも放置せず、調停や訴訟も視野に早めに手続きを進めましょう。時間が経つほど状況はこじれやすく、心労も増します。早期に専門家へ相談し、計画を立てることが肝要です。
離婚と不動産の問題は専門知識が求められるため、プロの力を借りることをおすすめします。福島市および周辺で利用できる主な相談先を紹介します。
不動産の名義変更や登記手続きを扱います。離婚による所有権移転や抵当権抹消、負担付贈与か否かの判断など、司法書士に依頼すると安心です。福島県司法書士会では「司法書士総合相談センター」を設置しており、平日10~12時30分、13時30分~16時に電話相談を受け付けています(☎0120-81-5539)。
必要に応じて面談で詳しく相談することも可能です。
財産分与や離婚調停・訴訟など法的トラブル全般のエキスパートです。話し合いが難航している場合や、相手が合意に応じない場合などは弁護士に交渉を依頼できます。福島県弁護士会では各地の法律相談センターで離婚相談を受け付けており、30分5,500円程度で利用できます。
所得に制限がありますが、国の法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば無料相談も可能です。法テラス福島(福島市北五老内町7-5 イズム37ビル4F)では毎週火・木に離婚や相続などの相談を実施しています。
地元の不動産仲介業者は、売却手続きや市場価格のアドバイスをしてくれます。離婚による売却事情も配慮しながら、スケジュール調整や契約手続きをサポートしてもらえます。
福島市役所にも離婚や暮らしの相談窓口があります。市の消費生活センターでは偶数月に司法書士相談を行っており、契約トラブルなどの助言が得られます。また、離婚に関する一般的な悩みはこども家庭課で女性相談員が応じており、夫婦関係やDVに関する相談も可能です。
このように行政の相談窓口は無料で利用できるものが多いので、まず気軽に問い合わせてみるとよいでしょう。
離婚と不動産処分は人生の中でも大きな出来事であり、精神的なストレスも避けられません。以下のポイントに留意し、少しでも負担を和らげましょう。
将来への不安は、行動を起こすことで和らぎます。例えば不動産の査定や専門家への相談を早期に行えば、漠然とした心配が具体的なプランに変わり、心の負担も軽くなるでしょう。先延ばしにせず、できることから一つずつ進めていくことが大切です。
一人で抱え込まず、信頼できる友人や家族に状況を話してみましょう。客観的な意見をもらうことで気づきが得られたり、感情の整理がつくこともあります。また、福島市の女性相談員による相談窓口や民間のカウンセリングサービスなど、第三者の力を借りるのも有効です。
「誰かに聞いてもらう」だけでも気持ちが軽くなることがあります。
離婚後の新生活に向けて前向きな計画を立ててみましょう。住まいを売却する場合は、売却後の資金でどんな住居に住むか、引越し時期や子どもの学校などを具体的に検討します。
将来の目標や新たなスタートのビジョンが見えてくると、不安より希望の方が大きく感じられるようになります。
不動産売却や法律手続きの細かな部分は専門家に任せてしまいましょう。
自分ですべて背負おうとするとプレッシャーになりますが、「ここはプロにお願いしたから大丈夫」と思えるだけで精神的に余裕が生まれます。信頼できる担当者を見つけて適宜任せることも、心の負担軽減には重要です。
忙しい手続きの合間でも、自分の心身のケアを忘れないでください。十分な睡眠やバランスの取れた食事を心がけ、リラックスできる時間を作りましょう。福島市内には温泉地(飯坂温泉や高湯温泉など)もありますので、疲れた時は温泉で癒やされるのも一案です。
心の健康が保たれてこそ、売却と財産分与のプロセスもスムーズに進むでしょう。
離婚に伴う不動産売却と財産分与は、多くの決断と手続きを伴います。本記事で述べたように、福島市の不動産市場動向の理解、基本的な売却プロセスの把握、パターンごとの対応策、そして税金・法律面の確認が重要です。
加えて、信頼できる専門家のサポートを得て、心身の負担を軽減しながら進めることで、きっと納得のいく解決に近づけるはずです。新たな生活への第一歩として、不動産の問題を着実にクリアしていきましょう。