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実家を売るなら段取りと手順が大事!損をしない売り時と対策を解説

実家売却のイメージ

「遠方にある実家を相続したが、住む予定がないので売りたい」

 

このように相続により実家を引き継いだものの、すでに自分の住まいを持っているため、地方にある実家を売却して、実家じまいをするというケースは多く見られます。

 

ただ、実家を売る場合、一般的な不動産売却とは異なる対応があるため、注意が必要です。

 

通常、相続の手続きから売却の完了まで半年〜1年ほどかかりますが、相続した実家を売るフローやポイントを知らなければ手続きでつまづいてしまい、売却までに長い時間がかかってしまう可能性があります。

 

そのため、遠方にある実家をスムーズに売却したいのであれば、段取りや手順を把握しておくことが重要です。実家を売る際の具体的な段取りと手順は、以下の通りです。

実家売却前後の流れ

やるべきことや基本的な流れを把握しておけば、遠方からでもスムーズに手続きを進められるので、ぜひ参考にしてください。

 

また、相続した実家を売るタイミングも重要です。売却後の税金を抑えられる特例があり、利用期限が決められているからです。

 

そこで本記事では、相続した実家を売るべきタイミングと一緒に、より良い条件で売って実家をたたむポイントについても紹介しています。

 

そのため、最後まで読めば「いつまでに実家を売るべきか」「どうすれば後悔せず実家を売ることができるか」という悩みについても解決できるはずです。

 

本記事を読むと実現できること
・実家をスムーズに売却するためにまずやるべき段取りがわかる
・基本的な手順を理解した上で、行動に移せる
・よりお得なタイミングに相続した実家を売る行動ができる
・実家を売る際の対策を知った上で、後悔しない売却ができる

 

では、早速見ていきましょう。

 

 

1.実家を売る手続きをスムーズに行うためにまずやるべき5つの段取り

実家売却の5つの段取り

実家を売るなら、事前の準備が大事です。段取りを間違えて売却活動を進めてしまうと、スムーズに手続きが行えないだけでなく、名義や売却した後の分配をめぐって相続人同士の揉め事に発展したり、事前の準備や掃除を怠ることで売却価格から大幅な値下げを要求されたりすることがあります。

 

そのため、実家を売る際には、以下5つの売却活動前にやるべきことを押さえておくことが重要です。

 

実家を売る前にやるべきこと 主なケース
遺言書の有無を確認する ・実家を相続した
分割方針を決める ・相続人が複数いる
所有者(名義人)を確認し、相続登記をする ・実家を相続した
・相続人が複数いる
土地の境界を確認する ・1つの不動産を相続人で分割する
・土地の一部を売却する
遺品を整理する ・家財が残っている

 

それぞれのやるべき理由やポイントを紹介します。

 

1-1.遺言書の有無を確認する

実家を売る際にやるべき段取りの中でも特に重要なのが、遺言書の有無を確認することです。

 

遺言書は、亡くなった方の意思が記された書面です。多くの場合、遺言書には不動産を含む財産分与について明記されており、遺言書の有無やその内容で対応が大きく変わってきます

 

万が一、遺言書の有無を確認せず売却活動を始め、手続きの途中や後に遺言書が出てくると、すでに進めていた一連の対応が無効となり、また初めからやり直さなければなりません

 

これでは、早く実家を売却したくて行動していたのに、結果的に手間も時間もかかってしまいます

 

特に、時間のロスは未然に防ぐことが大切です。なぜなら、「お得に売却できるか」に大きな影響を与えるからです。

 

相続した不動産を売却した際に、条件を満たすと税の控除が受けられる制度があります。

 

制度のよっては利用期限が設定されており、時間的な余裕がない中で遺言書の有無を確認し忘れてしまうと、一から手続きをやり直すことになり、期限内に手続きできず、お得に売却できるタイミングを逃すことになります。

 

そのため、スムーズかつお得に実家を売却したいという人は、相続した実家の売却活動を始める前に必ず遺言書がないかを確認しましょう。

 

遺言書の種類とそれぞれの確認方法
遺言書を確認しようと言われても、そもそも作成しているのかもわからないという人もいるでしょう。
遺言書は、大きく分けると「自筆の遺言書」と「公正証書遺言」の2種類があります。

【1】自筆の遺言書

<保管場所>
・自宅(書斎や金庫など)もしくは法務局

<注意点>

・自分で開封せず、必ず家庭裁判所で検認(開封)してもらう
・遺言書を預かってくれる「遺言書の保管に関する証明書」を利用している場合は法務局
※管轄の法務局で遺言書があるかを調べたい人は、以下をご確認ください。
法務局「管轄のご案内

【2】公正証書遺言

<保管場所>
・公証役場(1989年以降に作成された遺言書は遺言検索システムで検索可能)

<注意点>

・遺言書の有無を確認するには、公証役場に行き、窓口で申請手続きを行う必要がある
※近くの公証役場を調べたい人は、以下をご覧ください。
日本公証人連合会「公証役場一覧

自筆の遺言書は、自宅の書斎や金庫などで保管されているケースが一般的ですが、法務局で自筆の遺言書を預かる制度を利用している場合は、最寄りの法務局に行くと遺言書の有無を確認できます。

公正証書遺言も、公正証書へ行けば「遺言検索システム」を利用して、遺言書の有無を確認できます

そのため、

自宅に遺言書がないかを確認
自宅にない場合は、法務局や公証役場にも遺言書がないかを確認

このような手順でどこにも遺言書がないことを確認した上で、手続きを進めると安心です。

 

1-2.分割方針を決める

実家を売る前にやるべき段取りの2つ目は、分割方針を決めておくことです。なぜなら、これまで仲が良かった家族や親族でも、遺産相続をきっかけに険悪な状態になるというケースが少なくないからです。

 

裁判所が公表している司法統計年報によると、令和2年度(2020年)度に家庭裁判所で取り扱った遺産分割をめぐる事件の全国総数は1万1,303件となっています。

 

相続トラブルは、財産の大小に関係なく、どこの家庭でも起こる可能性があるため、しっかりと話し合いをすることが大事です。

 

特に、相続人が複数いる場合、実家を売る前に分割の方針を決めているかが、将来的なトラブルを左右します。後々の相続トラブルを防ぎたいのであれば、相続人全員で話し合いを行い、決めたことを書類にまとめて残しておきましょう。

 

もし遺産分割について不安や悩みなどがある場合は、プロや専門家などに相談するのがおすすめです。ただし、相談先にも得意不得意があります。

 

以下は、主な相談先とおすすめの利用シーンをまとめた表です。

 

相談先 おすすめの利用シーン
弁護士 ・遺産相続でトラブルになっている
・相手が弁護士を雇っている
・調停や裁判になる可能性が高い
・裁判を見据えた対応を考えている
司法書士 ・相続登記(名義変更)などの手続きが必要
・登記に関する悩みや不安がある
行政書士 ・書類の作成に困っている
・プロに力を借りたいが、コストもかけたくない
・手続きは自分でやるつもりだが、アドバイスが欲しい
税理士 ・税金に関する悩みや疑問を抱えている
・相続税の相談がしたい
市区町村の役所 ・相続全般について知りたい
・コストをかけず、相続についてアドバイスをうけたい(市区町村の役所主催の無料相談会など)

 

ひとりで解決ができないときには、上の表を参考にして、状況や相談内容に応じた相談先に問い合わせましょう。

 

1-3.所有者(名義人)を確認し、相続登記をする

3つ目に紹介する段取りは、実家の所有者(名義人)の確認です。

 

不動産は、原則名義人や名義人から委任を受けた代理人などしか売却ができません。そのため、相続した実家を売る場合は、相続登記を行う必要があります。

 

相続登記とは、土地や建物の名義を、前所有者(亡くなった人)から遺産を引き継いだ人(相続人)へ変更する手続きのことです。

 

実家を相続しても、登記変更の義務が生じないため、相続登記をしないまま、実家を所有しているケースが少なくありません。そのため、実家を相続してから売る場合、相続登記を忘れたまま売却活動を始めてしまうという失敗をよく見かけます。

 

売却活動を始めたところで、仮に名義変更をしないまま手続きを進めて買主が見つかっても実家を売ることができないため、名義変更していないことがわかった時点で相続登記をすることになります。

 

相続による実家の所有者を変更する登記手続きは、相続人全員の同意や書類を収集する必要があり、3~4週間程度かかるのが一般的です。

 

登記手続きでつまずくと、せっかく見つけた買主にも1か月以上待たせてしまう可能性があるため、相続による登記手続きは売却活動を始める前に済ませておきましょう。

 

ただし、相続人が複数いる場合、相続人を特定したり、全相続人から同意書を貰ったりする必要があり、素人では時間がかかってしまうことがあります。

 

また、仲が良かった親族でも、相続登記をきっかけにトラブルになることもあるため、円滑かつ問題なく手続きを進めたいのであれば、相続登記に詳しい弁護士や司法書士に相談するのがおすすめです。

 

1-4.土地の境界を確認する

実家を売る際にやるべき4つ目の段取りは、隣地との境目を確定することです。

 

境界線が曖昧な状態や口約束による境界線の確認は、将来トラブルの原因となってしまいます。そのため、

 

1つの土地を相続人でいくつかに分割することになり、自分の所有分を売る
相続した不動産の一部を売却する

 

このようなケースは、土地の境界をはっきりさせておくのがおすすめです。具体的には、隣接の土地所有者全員に立ち会ってもらい、境界線を確認した上で確定(境界確定測量)を行います。この測量は、土地家屋調査士などへ依頼すると代理で対応してもらうことができます。

 

ただし、土地の売却時に必要な確定測量は、一般的に50~100万円程度の費用が必要です。

 

コストがかかりますが、境界に争いがないことは相続不動産の売買における重要なポイントのひとつであるため、トラブルを避けたいという人は土地の境界を確定させておきましょう。

 

1-5.遺品を整理する

5つ目に紹介する段取りは、実家に残されたままの遺品の整理です

 

法的に、相続した実家に残された遺品(家財)は、相続人が引き継ぎます。そのため、家財は相続人全員で遺品整理を行うことになります。

 

残された実家は、どのような処遇を選んでも片付けない限りは次のステップへ進めません。しかし、遠方から週末を使って整理するとなると時間もかけられないと思います。

 

遺品の種類もさまざまで、行き当たりばったりの遺品整理では時間もかかってしまうため、遺品整理をする全員が共有の認識で作業を進められるよう、大まかな流れを理解しておきましょう

 

遺品整理の進め方
貴重品を探す 現金、通帳、有価証券、貴金属などを見つけ出す
形見分けをする ①の貴重品を含む思い出の品を相続人で話し合って形見分けをする
業者に依頼する 値が付く家電やブランド品などはリサイクル業者に買取をしてもらう
不用品を処分する 残った不用品は、自治体の分別法に沿ってゴミの日に処分する

 

上を参考に、作業に取り掛かる前に、遺品整理を行う全員が大まかな作業の流れを把握し、スムーズな遺品整理を実現しましょう。

 

どうしても自分で遺品整理ができない場合は、遺品整理などを行う専門の業者や家財が残ったままでも買取を行ってくれる不動産会社を見つけるのがおすすめです。

 

 

2.実家を売る基本の流れ<全6ステップ>

実家を売る基本の流れ

前章で紹介した5つの段取りを済ませたら、実際に実家を売るフェーズへ進みます。相続登記が終わり、相続人全員と遺残分割についての協議も終わったら、以下の流れで手続きを進めましょう。

実家売却の6ステップ

どのような行動をすべきか、以下で詳しく紹介します。

 

2-1.ステップ①:自分で不動産の相場を調べる

実家を売ると決めたら、不動産会社へ査定依頼をする前に自分で相場を調べておきましょう。大体の相場を把握しているだけで、不動産会社の査定額の妥当性を判断しやすくなり、よりよい不動産会社を選ぶことができるようになるからです。

 

調べる方法はいくつかありますが、実家(建物)を売る場合は、国土交通省の「土地総合情報システム」がおすすめです。

 

「土地情報総合システム」では、不動産の購入者を対象に行ったアンケート調査のデータを収集した情報が提供されており、実際に売買された価格などの情報を見ることができます

 

地域や間取り、取引期間などの情報で細かく絞り込むことができるため、実家周辺の相場感を把握しやすいツールです。

 

土地情報総合システムを使った相場の調べ方
不動産取引価格情報検索

出典:国土交通省「土地総合情報システム

 

1) 「土地総合情報システム」にアクセスし、「【1】時期を選ぶ」「【2】種類を選ぶ」「【3】地域を選ぶ」を指定する

「時期」は、基本的には直近の四半期を指定しましょう。その上で、売りたい実家(不動産)の種類と近くのエリアを指定して検索しましょう。

2) 取引価格の一覧を確認し、実家の条件に近い不動産の情報を参考に、相場を予測する

一覧では、まず最寄駅からの距離や面積などに注目し、売りたい実家の立地条件や広さに近い情報から実家の相場を予測しましょう。

 

以上の手順を参考に、自分で実家の相場を調べましょう。

 

2-2.ステップ②:不動産会社へ査定を依頼する

実家の相場を予測できたら、不動産会社へ査定を依頼します。

 

2-2-1.査定は複数の不動産会社へ依頼するのがおすすめ

査定は1社に絞らず、いくつかの不動産会社へ依頼するのがより高く売るポイントです。

 

「特定の不動産会社の査定額や対応に納得したのだから1社だけでもいいのでは?」と思う人もいるでしょう。

 

確かに、査定額の根拠も明確で、希望や要望に応じた対応が期待できるのであれば、査定を依頼する不動産会社が1社でも問題はありませんが、より良い条件で実家を売りたいのであれば複数社への査定依頼すべきです。

 

複数社へ査定依頼をすることで、「自社を選んでもらいたい」という業者間の競争が生まれ、査定価格が吊り上がり、サービス内容もより充実しやすく提案を受けたりしやすくなるからです。

 

各社の提案から実家の相場帯や評価も把握できるため、「この不動産会社に決めている」という場合以外は、複数の不動産会社へ査定依頼をしましょう。

 

2-2-2.査定には「簡易査定」と「訪問査定」がある

複数の不動産会社へ査定を依頼する場合、査定方法を統一しておくことが大事です。査定方法が異なると、査定額は大きく変わります。

 

査定額だけを見て判断すると、本当に選ぶべき不動産会社を見誤る可能性があるため、同じ査定方法で算出されているかどうかにも注目する必要があります。

 

不動産会社が行う査定は、大きく次の2つに分けることができます。

 

査定方法 特徴
机上査定
(簡易査定)
現在売り出されている類似物件や過去取引から査定額が算出される
訪問査定 不動産会社の担当者が現地を訪れ、建物の状況や周辺環境などを調査した上で査定額が算出される

 

机上査定は、不動産会社が取り扱っている近隣エリアや、過去の販売実績データにある類似物件の価格を参考に査定額が算出されます。文字通り、机の上で出される簡易な査定額であるため、「机上査定」や「簡易査定」と言われています。

 

一方の訪問査定は、現地を訪れ、細かな調査を行った上で算出されるため、机上査定よりもより詳細な査定額を把握することができます。

 

とりあえず、実家を売る場合の相場帯を知りたいということであれば机上査定でも充分ですが、詳しい査定額で不動産会社を選びたいという人は、訪問査定を選ぶことをおすすめします。

 

2-3.ステップ③:不動産会社を決定し、媒介契約を結ぶ

不動産会社の査定額が出揃ったら、その中から不動産会社を選び、媒介契約を結びます。媒介契約とは、実家売却の仲介を依頼する不動産会社と結ぶ契約のことです。

 

媒介契約は、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つがあります。

 

仲介を依頼する不動産会社といずれかの契約を結ぶことになりますが、どの契約を選ぶかで販売活動にも影響を与えるため、それぞれの特徴を理解した上で選ぶことが重要です。

 

▼3種類の媒介契約の比較表

一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
自分が見つけた買主との契約 可能 可能 直接取引は不可が多い
契約可能な不動産会社の数 複数社と契約可能 1社のみ 1社のみ
メリット ・不動産選びでのリスクが低い
・複数の会社からPRしてもらえる
・より条件の合う買主を見つけやすい
・販促活動に力を入れてもらいやすい ・スピード感のある対応が期待でき、比較的早く売れやすい
デメリット ・人気がない物件は、販促に力を入れてもらえない可能性がある
・販売状況を把握しづらい
(依頼人に対する販売活動の報告が義務化されていないため)
・不動産会社の力量に左右される可能性がある ・自分で買主を見つけても仲介手数料を採られるケースが多い
・不動産会社の力量に左右されやすい
向いている人 ・複数の不動産会社を利用して、早く買主を見つけたい人 ・自分でも買主を見つけたいが、販促活動にも力を入れてほしい人 ・全ての手続きを任せたい人

 

以上の3つの媒介契約における特徴を紹介しましたが、結論から言うと、バランス型の専任媒介契約がおすすめです。

 

一般媒介契約は制限が少なく、複数の不動産会社を通じて実家の販促活動ができますが、1社契約ではないので、不動産会社も「自社は選ばれないかもしれない」という思いが生じやすく、力の入り方は、専属媒介や専属専任媒介に比べるとやや劣ります。

 

逆に専属専任媒介契約では、販促状況を細かく報告する必要があるので、不動産会社の営業活動にも力が入りやすいですが、制約も多い状況です。

 

そのため、媒介契約にこだわりがない場合は、販促活動にも力が入りやすく、自分で見つけた買主との契約にも制限がない専任媒介契約を選んでおけば、不動産会社とうまく連携しながらより良い販促活動を行えるでしょう。

 

販促活動におけるポイント
不動産会社との媒介契約が終わると、基本的には不動産会社主導で本格的な販促活動が始まりますが、具体的な販促活動は売主の意見を尊重して行われるのが一般的です。

そのため、不動産会社との話し合いをスムーズにするためにも、実家をどのように売るのかを整理しておきましょう。具体的には、次の4つの項目を押さえておくと不動産会社も要望を汲み取りやすくなります。

1. 売り出し価格(理想の売却価格や自分が考えている売り出し価格など)
2. 売却時期(どれくらいの期間で売却したいかなど)
3. 要望の優先順位(「高く売りたい」「早く売りたい」など)
4. 希望の売り出し方(積極的な広告によるPRを希望するかなど)

不動産会社の担当者と一緒によく検討した上で、価格や売り出し方を決定しましょう。

 

2-4.ステップ④:買主と交渉し、売買契約を締結する

販促活動により買主が見つかったら条件交渉を行い、売主と買主の両者が合意の上で、売買契約を締結します。

 

買主との条件交渉や取引に関する重要事項の説明については、不動産会社が行うため、売主が特別にやるべきことはありませんが、売買契約書の内容確認は必ず行ってください。契約締結後に約束を破ってしまうと、違約金などが発生することもあるからです。

 

売買契約書には、売主と買主双方の権利や義務について記されています。契約時点でわからない部分や疑問があれば、必ず不動産会社に確認し、全項目に納得した上で売買契約を締結しましょう。

 

2-5.ステップ⑤:決算後、実家を引き渡す

売買契約を締結すると、買主から残金が支払われ、決済が終わると実家を引き渡します。

 

売買契約から実家の引き渡しまでの期間は、1か月程度です。決済と実家の引き渡しは、同時に行われるのが一般的で、1〜2時間程度で終了します。

 

決済後に住宅関連書類と鍵の受け渡しを行いますが、必要な書類を当日忘れてしまうと、引き渡しができなくなる可能性があるため、注意が必要です。

 

実家を引き渡す際に必要な書類は、不動産会社から案内がありますが、主な書類としては以下の6点があげられます。

 

▼決済当日に必要になる主な書類

・登記済権利証(登記識別情報通知)
・固定資産税等納付通知書
・本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
・名義人の住民票
・実印・印鑑証明書
・通帳・銀行印

 

上記以外にも、不動産会社から指定された書類が必要になることもあります。

 

直前になって準備をすると、引き渡しを行う日に書類がそろわないという事態を招きかねません。引き渡し日の1週間前を目安に抜けなく用意しておくと、万が一の際にも安心です。早めの行動で、スムーズな受け渡しを実現しましょう。

 

2-6.ステップ⑥:確定申告をする

基本的な実家を売る流れは、ステップ⑤で終わりですが、実家を売って利益が出た場合には、確定申告が必要です。相続不動産を売却することで得た利益が「所得」とみなされるためです。

 

申告する金額は、相続した実家の売却価格ではなく、売却するにあたって必要になった仲介手数料や相続登記費用などの諸費用を引いた金額です。確定申告では、諸費用の証拠書類として、売買契約の際に受け取った契約書や領収書などのコピーを添付することになります。

 

そのため、確定申告が必要なケースに該当する人は、確定申告までに以下の書類を準備しておきましょう。

 

主な添付書類 取得場所
売買契約書のコピー 自分で用意
売却にかかった費用の領収書コピー
(仲介手数料、測量費、相続登記費用などがわかるもの)
自分で用意
譲渡所得の内訳書 国税庁
(郵送で届く)
譲渡した土地の全部事項証明書
(登記簿謄本、登記事項証明書)
法務局

 

確定申告についてわからないことがあれば、以下の国税庁HPにある利用方法を確認しましょう。

 

国税庁「確定申告書等作成コーナー

 

国税庁のHPを見てもわからないときは、郵便番号や住所、地図などからお近くの税務署を探し、電話や窓口にてご相談ください。

 

国税庁「税務署の所在地などを知りたい方

 

 

3.相続した実家は「3年以内」に売るべき

相続した実家は3年で売却すべき

ここまでの手続きを見て、「なんだか大変そうだな」「今忙しいから、実家を売るのはもう少し後にしようかな」と思った人がいるかもしれません。

 

確かに、相続した実家を売る場合、やるべき手続きが多く、後回しにしたくなる気持ちもわかりますが、相続した実家を使用する見込みがなければ3年以内に売るのがおすすめです。

 

理由としては、次の3つがあげられます。

実家を3年以内に売るべき理由

ひとつずつ詳しく解説します。

 

3-1.実家を売却した際に得た利益にかかる税金が安くなる

相続した実家を「3年以内」に売るべき一番の理由は、税金を安く抑えられる可能性があるからです。特に、次の特例は、要件を満たしているのであれば忘れずに利用すべきです。

 

特例 利用することで得られるメリット 利用期限
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 ・相続や遺贈で取得した財産を一定期間に譲渡すると、相続税額の一部を取得費に加算できる特例
・適用されると、実家の売却による利益に対して納める税金が安くなる
相続後、3年10か月以内が一般的
(※財産を相続した日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を過ぎるまでに譲渡)

参考:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

 

特例を利用するケースと利用しないケースで、最終的に支払う税金がどれくらいの違いが出るのかを見ていきましょう。

相続財産譲渡の取得費特例

ご覧のように、取得費加算がなければ譲渡所得税の対象となる金額が大きくなり、その分支払う税金額も増えます。譲渡所得にかかる税金の税率は、相続した実家の所有期間で以下のように設定されています。

長期、短期の譲渡所得

参考:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算

 

個別のケースによってお得度は変わってきますが、先ほど紹介したモデルケースを例で紹介すると、

 

・取得費加算なし:(5年超)約264万円/(5年以下)約515万円
・取得費加算あり:(5年超)約203万円/(5年以下)約396万円

 

所得費加算の特例を利用すれば、実家の所有期間が5年以上なら約60万円、5年以下なら約119万円も税金が安くなります

 

なお、特例にあてはまるかは、国税庁が用意している以下の特例チェックシートで確認可能です。

 

国税庁「相続財産を譲渡した場合の相続税額の取得費加算の特例チェックシート・措法39条

 

上のチェックシートだけで判断できないケースや疑問がある場合は、国税局電話相談センターでも相談を受け付けています。少しでも特例にあてはまる可能性があれば、問い合わせをして確認しましょう。

 

3-2.早く売るほど維持・管理の費用を削減できる

実家を3年以内に売るべき理由の2つ目は、早く売って所有期間が短くなることで、維持・管理にかかる費用を抑えられる点があげられます。

 

不動産を所有すると、固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。戸建ての場合は10~12万円、マンションは8~10万円が平均的な相場です。経年劣化による不動産評価額の減少がありますが、3年ほどでは、金額はほとんど変わりません。

 

また、住んでいなくても、自然災害や老朽化による倒壊を防ぐためのメンテナンスも必要です。実家が遠方にある場合、不動産の管理業者に実家の管理を依頼すると管理委託コストもかかってしまいます。

 

空き家のまま所有しているだけでも毎年10万円前後の維持・管理費がかかってしまうため、実家に住む予定や貸す予定がないのであれば、3年以内と言わず、早めに売却することをおすすめします。

 

3-3.不動産の価値が高いうちに売るほど高く売れる

実家を3年以内に売るべき理由3つ目は、高く売ることができ、相応の現金を手に入れることができることです。

 

建物には、法定耐用年数があります。国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」によると、一般的な木造の建物の法定耐用年数は22年、鉄骨鉄筋コンクリートは47年という基準が設けられています。

 

建物の評価は、法定耐用年数を分母に、築年数分だけマイナスされるため、築年数が増えるほど実家の評価は下がる一方です。以下は、国土交通省が、中古戸建て住宅の価格査定の推移をまとめたグラフです。

中古住宅の価格査定例
参考:国土交通省の「中古住宅流通、リフォーム 市場の現状(国土交通省)

 

ご覧の通り、築20年を超えると資産価値は低下し、価格もほぼゼロになります

 

資産価値は築年数だけで決まりませんが、築年数が短いほど資産価値も高い傾向が見て取れるため、住む予定のない実家は、相続から3年以内を目安に売却するようにしましょう。

 

 

4.実家を売る際に後悔しないための4つの対策ポイント

後悔しない実家売却

思い入れのある大事な実家だからこそ、「後悔しないよう、より良い条件で売り、実家じまいしたい」と考える人もいるでしょう。

 

そこでこの章では、実家の売却で後悔しないために知っておくべき4つの対策ポイントを紹介します。

実家売却の際の重要ポイント4つ

この4つの対策ポイントを押さえておけば、実家売却の失敗を最小限に抑えることができ、理想の売却取引ができるようになるはずです。

 

ひとつずつ見ていきましょう。

 

4-1.相続した不動産の売却にかかる税金の軽減制度や特例を調べておく

実家を相続した際の税金面で後悔をしたくないのであれば、税金を安く抑えるための知識を身につけましょう

 

知識を身につけるといっても、さまざまな制度や特例を覚えようというわけではありません。自分が該当するのかを調べる術を知っておけば、失敗や効果を防げます

 

特に知っておきたい特例は、以下の2つです。

 

▼特に知っておきたい特例

特例や控除の名称 内容と要件の抜粋
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 3-1.実家を売却した際に得た利益にかかる税金が安くなる」で紹介した特例。相続税額の一部が取得費として加算され、実家の売却で得た利益(売却金額から取得にかかった費用や経費を除いたもの=譲渡所得)にかかる税金が軽減される。

<要件の一部>

・相続した日の翌日から3年10か月以内に空き家を売却
・実家を相続したときに相続税を支払った

相続空き家の3,000万円特別控除 実家の売却で得た利益のうち、3,000万円までが非課税となる制度。

<要件の一部>

・相続した日から3年以内の売却であること
・昭和56年5月31日以前に建築された建物が対象
・相続から売却して譲渡するまでの間、居住や事業用として使用していないこと

 

売却により得た利益にかかる税金が抑えられたり、税金そのものがかからなくなったりするため、実家を売却して利益が出た人は特に注目です。

 

なお、上の2つ以外にも、さまざまな特例が用意されています。税に関する情報は、国税庁のHPで調べるのが一番手っ取り早い方法です。

 

相続・贈与に関する情報は、特例の一覧もしくは、択一式(複数の選択肢から1つを選ぶタイプ)のQ&Aから自分に合った制度や特例を探すことができます。実家を売るという意思が固まったら、軽減制度や特例についても調べるようにしましょう。

 

▼特例の一覧

国税庁「相続・贈与

 

▼択一式のQ&A

国税庁「自分に合った状況から探す

 

4-2.共有名義で売る場合はルールを決めておく

実家を複数人で所有する「共有名義」としている場合、権利関係が複雑でトラブルになりやすい傾向です。そのため、売り出す前に必ずルールを決めておきましょう。

 

特に決めておきたいのが、次の2つです。

 

・売却にかかる費用の負担
・売却によって得た利益の分配

 

自分の持分割合(それぞれの所有権の割合)に応じて費用負担や利益の分配を行うケースが一般的ですが、単なる口約束では、後々トラブルとなる可能性があります。

 

万が一に備え、決めたルールは書面にまとめ、共有名義人全員の署名や捺印をもらっておくと安心です。

 

4-3.査定は必ず複数の不動産会社に依頼する

2-2-1.査定は複数の不動産会社へ依頼するのがおすすめ」でもお伝えしましたが、実家売却で後悔しないための大事なポイントなので、もう一度お伝えします。

 

比較検討してより良い条件の不動産会社を選べるよう、必ず複数の不動産会社へ査定を依頼しましょう。

 

査定は不動産会社を選ぶ際の判断基準のひとつで、査定依頼を通じて「査定額が相場と合っているか」「査定額の根拠や説明に納得できるか」といった情報からより良い不動産会社を絞り込むことができます。

 

実家の売却を成功させるには、不動産会社選びが重要です。急がば回れということわざがあるように、遠回りでも失敗のない確実な方法で検討することをおすすめします。

 

4-4.不動産のアピールポイントをまとめておく

スムーズに売却するためには、物件の特徴をうまくアピールすることが鍵となります。実家の魅力がうまく伝わらなければ、いつまでも売れず、売却価格を下げることになるからです。

 

一般的に、売り出してから買主が見つかるまでの平均期間は3~5か月が目安です。

・立地(交通の便や暮らしやすさ、子育てのしやすさなど)
・類似物件よりも割安な価格
・物件の特徴(広さ、庭の有無、駐車場、リフォーム状況、有名ハウスメーカーなど)

 

上は、一般的なアピールポイントですが、より早く希望通りに物件を売りたい人は、もう一歩踏み込み、その人が住みたくなるアピールポイントをまとめておくべきです。具体的には以下のような内容です。

 

アピールポイントの一例 買主が魅力に感じる部分
・太陽光発電と蓄電池システムがある お金に関するお得感
・大通りは街灯も多く、夜21時でも人通りがある 防犯面
・駅から自宅までの帰り道に夜23時まで営業している業務スーパーがある 立地条件の良さ
・小学校まで徒歩10分/車5分圏内に保育園が2か所ある 子育てのしやすさ
・日当たりが良く、手入れの行き届いたガーデニングスペースがある 趣味を楽しめる環境

 

アピールポイントは、万人受けを狙う必要はありません。自分がデメリットだと思っている部分も、他の人にとっては魅力的に感じることもあります。

 

例えば、「日当たりの良いガーデニングスペースがある」の場合、庭の手入れにわずらわしさを感じている人にとってはマイナスポイントとなる可能性がありますが、家庭菜園などに興味がある人にとって、手入れされたガーデニングスペースは魅力です。

 

実家は1軒しかないので、あなたの実家に興味を持ってくれる1人の買主さえ見つかれば売却できます

 

そのため、実家ならではのアピールポイントをまとめて不動産会社に伝え、特徴や個性をしっかりと発信してもらいましょう。

 

 

5.遠くの実家を売る場合は地元の不動産会社を選ぼう

地元に強い不動産会社を選ぶ

実家を売る流れや失敗しないためのポイントを踏まえ、「実際に実家を売りたい」と思っても、実家から離れた場所に住んでおり、なかなか行動できずにいるという人も多いと思います。

 

特に、不動産会社選びでは、全国展開している大手と地域に根差した不動産会社のどちらを選ぶべきか悩みますよね。

 

もちろんどちらにもメリット・デメリットがありますが、結論から言うと、遠方にある相続した不動産を売る場合は「地元の不動産会社」への依頼がおすすめです。なぜなら、地元の不動産事情に精通しており、過去の事例や傾向を活かした査定や販促活動が期待できるからです。

 

実家に限ったことではありませんが、不動産の売却では地元のネットワークや情報が必要不可欠です。古くからその地域で不動産事業を行う業者なら、県民性や土地柄はもちろん、実家周辺の不動産事情にも詳しいため、安心して任せられます。

 

物件の状況も把握しやすく、代理委任状を作成することで、内覧や物件引き渡しの際にも代理人の立ち会いのもとで行ってもらえます。

 

現地へ頻繁に通えないような遠方の実家を売りたい人は、実家の周辺にある地元の不動産会社を選びましょう。

 

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まとめ

実家を売る場合、通常の不動産売却とは異なり、事前の準備が必要になります。

 

段取り良く進めなければ、途中の手続きでつまづいてしまい、何度も足を運ぶことになるかもしれません。

 

売却するまでの時間もかかり、お得な特例の利用期限を逃したり、築年数を重ねて物件の価値を下げてしまったりする可能性があるため、段取りや基本の実家売却の流れは把握しておくことが大切です。

 

本記事のおさらい
◎実家を売る前にまずやるべき段取りは5つ

・遺言書の有無を確認する
・分割方針を決める
・所有者(名義人)を確認し、相続登記をする
・土地の境界を確認する
・遺品を整理する

事前準備が整っていなければ、実家を売るという話も進みません。仮に、手続きを進めたとしても、後々トラブルの原因となるため、いずれの段取りも、必要なケースには事前にやっておきましょう。

◎実家売却の基本の流れは全部で6ステップある

1. 自分で不動産の相場を調べる
2. 不動産会社へ査定を依頼する
3. 不動産会社を決定し、媒介契約を結ぶ
4. 買主と交渉し、売買契約を締結する
5. 決算後、実家を引き渡す
6. 確定申告をする

◎相続した実家は「3年以内」を目安に売るべき

・税金が安くなるため
・維持・管理にかかるコストを削減できるため
・不動産価値の高いほうが価格も高額になりやすいため

このようなメリットがあるため、住む予定がないのであれば3年以内を目安に実家を売るようにしましょう。

◎実家を売る際に後悔しないためのポイントは4つ

・税金がお得になる軽減制度や特例を調べておく
・共有名義の場合は、売却にかかる費用や分配のルールを決めておく
・必ず複数の不動産会社へ査定を依頼する
・実家の個性や特徴となるアピールポイントをまとめておく

 

慎重な判断と行動で、思い入れのある実家をベストな形で売却できるよう祈っております。

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